孔融(こうゆう)
戦争がつづいて、兵糧が不足がちになるので、曹操はしばらく酒の醸造を禁じた。孔融はまた手紙を送った。 ?天には酒星の輝きが垂れ、地には酒泉の郡が列(なら)ぶ。人には酒を旨(たしな)むの徳有り。… この世に酒は欠くべからざるものであると説いた。孔融は酒が好きである。彼が愛したのは、客(すなわち友人)と酒であった。 坐上 客 恆(つね)に満ち 樽中(そんちゅう) 酒 空しからず これが彼の人生のモットーだった。孔融の書簡にたいして、曹操は返書を送った。その内容は、酒は亡国の原因である、と論じたものだった。孔融はまた手紙を書いた。 ?酒が亡国の原因となることは、たしかにあるでしょう。けれども、徐の偃王(えんおう)は仁義を重んじすぎて国を亡ぼし、燕の「口會」(一字、かい)は謙譲すぎて滅亡し、魯は儒を尊重しすぎて衰弱しました。
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だからといって、仁義や謙譲や儒を禁じてよいでしょうか?夏の桀王、殷の紂王は色をもって国を亡ぼしました。だからといって、いま婚姻を禁じるといえるのでしょうか。なぜ酒だけがいけないのですか?酒だけを禁じるのは、穀物がほしいからではありませんか… へらず口の見本のような内容であった。兵糧が足りないのなら、正直にそういえばよいのに、仰々しく亡国をもちだしたので、そこを突いた、といわんばかりである。曹操の忍耐は限界に達しつつあった。(「中国畸人伝」 陳舜臣) 曹操は三国時代、魏の創始者で、結局、「へらず口」孔融は曹操に殺されたそうです。